コラム凡語:タイ洞窟救出劇(京都新聞)

タイ北部チェンライ郊外にあるタムルアン洞窟は、国立公園内の全長約10キロの鍾乳洞だ。奥深くまで入る観光客はまれで、地元の子供たちの遊び場になっているという▼そこに大雨で水が流れ込み、中ほどで閉じ込められていた地元サッカーチームの少年ら13人全員が無事救出された。遭難から実に18日目である。健康状態は良好といい、最良の結果に安堵(あんど)した人は多かろう▼全員生還は「奇跡」とも言われるが、そこには本人たちの冷静な行動と関係者の連携の力があった。少年らは1カ所に集まり、体力を温存しながら壁にしたたる雨水だけを口にし、発見されるまでの10日間を耐えた。コーチの的確なサバイバル指導が生きたとみられている▼雨による水位上昇や酸素不足が懸念され、時間との闘いになる中、タイ当局は少年らに潜水技術を習得させ、潜水士2人が付き添って3人一組で出口を目指す方法を最終的に選ぶ▼視界が悪く、プロのダイバーでも移動が難しいと言われる複雑な地形である。全員が切り抜けられたのは、サッカーで培った心身の強さや機敏性もプラスに働いたのだろう▼だが、水位上昇が想定される雨期に洞窟の奥まで入った軽率な行動は、決してほめられない。救出劇の裏に周囲の命がけの努力があったことを忘れてほしくない。
[京都新聞 2018年07月12日掲載]