点滴連続中毒死 看護服から界面活性剤 状況証拠重ね供述引き出す(産経新聞)

横浜市の大口病院に入院する患者の連続中毒死発覚から2年弱。神奈川県警は早くから病院の内部犯行との見方をしていたが、直接的な証拠はほとんどなく、容疑者の絞り込みは難航した。一方、ナース服のポケットから界面活性剤成分が検出されたのが、久保木愛弓(あゆみ)容疑者(31)=殺人容疑で逮捕=だけだったことで局面が展開。状況証拠を慎重に積み重ね、先月末になって薬物混入を認める供述を引き出した。(河野光汰)

 「多くの材料を見つけ、その全てに当てはまる最大公約数の人物を探す作業」。捜査関係者がそう明かすように、今回の事件は防犯カメラの画像など、犯人特定に直接つながる証拠に欠いた。異物が混入された点滴には目立たないゴム栓部分から注射器で刺したような痕跡を確認。素人には難しい技術で、県警は早い段階で「医療知識がある内部関係者の犯行」という見立てを持っていた。

 ただ、点滴袋が無施錠のナースステーションに保管され、誰でも触れる状態だったことや、院内に防犯カメラが設置されていなかったことが、捜査の長期化を招いた。

 袋から特定の個人の指紋が検出されても容疑者とは言い切れず、カメラなしでは人の出入りの把握も困難なためだ。保管されていた未使用の点滴袋約10袋でも穴を確認。事件は無差別殺人の様相を呈した。

 一方、県警が事件後に看護師らのナース服を調べた結果、久保木容疑者の服のポケット部分から消毒液の界面活性剤成分を検出。ほかの看護師らからは検出されなかったとみられる。

 「混入させた際に薬品をポケットにしのばせて運んだのでは」(捜査関係者)。状況証拠を積み重ねた県警は、先月末から久保木容疑者に対する録音・録画による任意の事情聴取に踏み切り、薬物混入を認める供述を得たという。

 捜査関係者によると、未使用の点滴袋から検出された界面活性剤は「注射器およそ1本分」に上る量。捜査関係者は、久保木容疑者に医療知識があることを引き合いに「それだけ体内に入れれば死亡する可能性が高いことは分かっていたはず」と指摘する。

 大口病院をめぐっては、事件前の約3カ月間で約50人の患者が死亡。久保木容疑者は「ほかの患者にも(消毒液を)入れた」とも供述しており、事件前に死亡した男女の遺体からも界面活性剤が検出されたが、ほかの大半の遺体が火葬済み。今回の連続殺人事件との関連を立証できるかは不透明な状況だ。